伊丹のおくりびとブログ

家族葬の実際

 

「家族葬」

 

平成に生まれた葬儀形態のひとつ。

 

 

提唱しはじめたのは

たしか葬儀業界側でした。

 

 

僕がこの仕事、

葬儀のお仕事に携わるようになった

33年前は

「家族葬」と言う言葉も概念も

存在しませんでした。

 

 

その当時、

今で言う「家族葬」に相当する葬儀は

「密葬」と呼ばれていました。

 

 

ただし

密葬というのは本来

後ろに本葬を控えているのが基本で

 

社会全体に窓口を開いて行う本葬の前に

近親者のみで行うのが密葬。

 

だったんですが

 

本葬を行う予定もなく

密葬を選ぶ人が増えてきたのです。

 

時代的には

1990年代初頭にバブルが崩壊し

1995年に阪神淡路大震災が起き

1997年に消費税が5%に増税され

2000年にリーマンショックが起きた

 

↑この頃だったでしょうか

 

バブル経済崩壊した1990年代

世間でデフレが進む中でも

一般家庭の葬儀の単価(規模)は

暫く落ちませんでした

 

「お葬式はちゃんとせなあかん」

と言う概念が残っていたんだと思います。

 

それがバブル崩壊を迎えた数年後

葬儀の単価も下がり

葬儀の規模も小さくなり始めたのが

2000年前後でした。

 

その2000年頃に

急に現れた言葉が「家族葬」です。

 

実際に僕がお客様と

葬儀の打ち合わせをする時も

「経済的理由」で密葬を選ぶ人が

少なからずおられました。

 

「みんな呼んでお葬式をしたいけど…」

「どうすれば費用を安く押さえられるか…」

 

そんな相談が多く寄せられてました。

 

それと

「密葬」だと謳って葬儀をしても

蓋を開けると

想定してない人たち、

本来参列を断ろうと思っている

範囲の人たちまで

お参りに来て

「近親者だけで行いたい」という

家族の要望は叶わない事が殆どでした。

 

その原因の一つはテレビ。

 

著名人の訃報

 

例えば芸能人の葬儀を報道する際に

「密葬でしめやかに通夜が営まれ…」と

カメラを向けられたレポーターが喋る後ろで

次々と芸能人が弔問に訪れているシーンが

テレビで流される。

 

弔問を終えた芸能人にマイクを向けて

故人を悼むコメントを拾い流す。

 

こんな映像が当たり前に流されていた頃

「密葬です」と言っても

世の中が放っておいてくれませんでした。

 

「近親者のみで行います」

とお断りしてるのに

「私は近親者です」

と思って参列する人が後を絶たない

 

そんな社会背景の中で

 

本当に家族親族、近親者のみで

葬儀をするにはどうすればいいだろう?

 

という策を巡らせて生まれたのが

「家族葬」。

 

「近親者のみ」と言われ

「私は親しくしていた」と思う人も

 

「家族だけで」と言われたら

「私は家族じゃないし。。。」

 

ってなりますよね?

 

これである程度の線引きはできました。

 

と同時に

「家族葬」が本格的に普及し

社会の中で「家族葬」が

認知されてきた事もあり

 

かつて「密葬」「家族葬」と聞いて

 

「そう言われても故人には世話になったし

参列しない訳にはいかない」

「密葬」の敷居を越え

「家族葬」の敷居を越え

乗り込んでくる会葬者。

 

それが

家族葬が認知され普及した結果

「招かれてないのに行くのは失礼に当たる」

に少しずつ変わってきて

「故人や遺族の意思を尊重して」

参列を控える風土になってきた。

 

 

かといって

これで全てうまく収まらないのが

お葬式(人の心)で。

 

 

実際に「家族葬」でのお葬式も

家族だけじゃなく親戚や友人で

お送りしているのが現実です。

 

さて

ここで例え話をします。

 

家族葬でお葬式をする時

どこで線を引きますか?

 

お父さんが亡くなったと仮定して

 

故人(父)が居て

配偶者(母)が居る。

喪主(自分)がいて

自分の家族がいる。

弟や姉など兄弟の家族もいるし

場合によっては成人した孫家族もいる。

 

ーー家族ってここまでかな?ーー

 

でも

故人の兄弟、

叔父や叔母を無視できないし

 

叔父叔母は高齢なので一人で動けず

介添いとして従兄弟も来る。

 

あるいは叔父叔母は施設に入ってるので

従兄弟が代わりに来る。

 

ーー親族で区切るならここかな?ーー

 

親族を「血族」から「姻族」に広げると

母の兄弟

母側の従兄弟

妻の親兄弟

弟や姉の配偶者の親兄弟まで

親戚の輪が広がっていく。。。

 

 

親戚に黙ってする訳には行かない

家族葬だからといって

家族だけでは行えない

かと言って範囲を大きく広げると

キリがない。

 

と言うジレンマがあります。

 

これを解消する方法は

一つだけあるんですが

それはまた別の機会にお話しします。

 

僕の意見は

ちゃんと皆んな呼んで(声をかけて)

お葬式をするのがいい。

相手が来るか来ないかの判断は

相手に任せればいいし

来れない事情があれば

来れないでいい。

 

父を送るにあたり

喪主を務めるにあたり

周囲に「不義理」をしないように

父が不義理をして旅立たないように

残った母が後で非難されないように

ちゃんと皆んなで送ってあげるのが良い

 

と思います。

 

僕の親世代は

8人兄弟や10人兄弟で

親戚だけでも50人以上になってましたが

それも一昔前のお話で

 

今は親戚みんな集めても

そんな大人数になる事も少なくなってます。

 

ここまでは親族の話で

 

ここからは親族じゃない範囲のお話をします。

 

家族葬でする

と言うことは

家族親族以外は呼ばない。

ご近所さんや会社関係は呼ばない

と言うこと。

 

でもそんなわけに行かないことが

多々あるのがお葬式(人の心)で

 

例えば

喪主を始めとする子どもたちの

勤務先や取引先などの会社関係も

ご近所さんや地元の市会議員さんも

孫の学校関係もお稽古事の関係も

いわゆる「社会的立場」関係の

会葬者はお断りしたい

 

けど

 

お父さんと親しくしていた友人には

お母さんと親しくしていた友人には

あるいは

家族ぐるみでお付き合いをしていた友人には

来てもらっても良いし

できれば最後は一緒に送ってもらいたい。

 

と言うのが実際で

 

コロナ禍が始まるまでの

「家族葬」は

家族だけじゃなく

親族(血族、姻族)も居るし

本当に親しくしていた友人も居る。

 

そんな家族葬。

 

いわゆる本来の意味の

「近親者で送るお葬式」でした。

 

そんな状況なので

「家族葬をしたいのですが」と

お葬式の相談に来た人にはまず

「家族葬にどんなイメージを持ってるのか」

をお聞きするようにしています。

 

大体の人は相談目的は葬儀の費用。

葬儀の費用は予算は提示してくれれば

どうにかできる(どうにかする)ので

ざっくり費用の説明をした後

上でお話しした内容を説明して

「お客様の場合はどうですか?」

とお聞きしています。

 

殆どの場合が

安易に考えてしまっていた

お金より大切な事があったんですね。。。

そう仰られます。

 

 

家族葬が現実を伴わず

普及しすぎた影響でしょうか

 

家族葬といっても

家族だけでは送れない

 

「家族葬」大流行の今も昔も

大切なのは「おくる心」と

おくられる人への思い遣り

でしょうか。

 

家族葬なら幾ら

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安価で簡単で安心で。。。

って書いてるホームページが溢れる今

もう一度考えてみませんか?

 

簡単に済ませるのが

最善の方法なのか

 

葬儀社側の都合や商品に捉われられず

故人にとっても遺族にとっても

一番良いおくり方はどうなのか。

 

やり直しのできないお葬式

皆さんの心(気持ち)を

どうぞ大切に。

 

 

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